オンラインでの「人」探し:ポール・マイヤーズが明かす基本テクニック

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文:​ポール・マイヤーズ
翻訳:エァクレーレン

この記事はthe Global Investigative Journalism Network (GIJN)によって公開されました。日本語訳はGIJNのご支援のもと報道実務家フォーラムが公開したものです。貴重な情報を提供してくださり心より感謝申し上げます。

This story was originally published by the Global Investigative Journalism Network.
J-Forum publish the Japanese translation with GIJN’s support. 
We’re grateful to GIJN for offering and allowing to translate it into Japanese. 

 デジタルな手段で効果的な調査を行うには、個人や団体に関する細かな情報を集め、それを組み合わせて包括的な全体像をGIJNでは、オンライン調査における国際的な第一人者であるポール・マイヤーズによるウェビナーを2回開催し、約80カ国から500人以上の参加を得た。BBCに在籍し、GIJNのカンファレンスでも人気の高いマイヤーズは、「人」に関する情報収集に向けた最善のツールと戦略について独自のノウハウを紹介した。このウェビナーを元に、以下、マイヤーズ流テクニックをまとめたのでご覧頂きたい。なお、Facebookの検索機能の変更を反映するため、内容は2019年7月に更新された。

注:製品・サービスの紹介は、推奨を意味するものではない。これ以外にも利用可能な製品・サービスがある。

​グーグル検索

グーグルで検索オプションを使えば、適切な人物を検索する際に役に立つ。例を挙げよう。

1. 引用符(“”)を使って複数の単語を結びつける。

 引用符(“”)なしで「John Major」を検索すると20億件以上がヒットする。だがその大半は、単にmajor及びjohnという単語を含んでいるというだけで、無関係なページだ。

 同じ2つの単語を引用符(“”)で挟んで検索を実行すると、ヒット数は200万件以下になるが、すべて「John Major」というフレーズそのものを含んでいる。

2. 「OR」を使ってオプションのキーワードを検索に追加する。

 たとえば、ジャーマンウィングス9525便の副操縦士について検索してみよう。

注:ジャーマンウィングスとは、ドイツ格安航空会社で、2015年に9525便が墜落事故を起こした。副操縦士による故意の墜落と判断された。

 上のように検索することで、彼の出身地、本名Andreasまたは愛称Andyのいずれかを使った姓名、あるいは[SNS等での]ユーザー名を含むページを見つけることが可能になる。

3. 「site:」オプションでドメインやURLの一部を指定する。

 たとえば、検索範囲を米連邦航空局内のソースに絞りたい場合は、次のように検索する。

​時間を遡る​

​ ときには、削除されたツイートやウェブサイト、Facebookアカウントなど、ウェブから消えてしまった情報が必要になることもある。情報を復活させるときに役立つツールはたくさんある。

1.検索エンジンのキャッシュ

​ 情報が最近削除されたばかりで、まだグーグル検索でヒットするようであれば、検索結果の項目の脇にある小さな黒い▼をクリックしてみよう。こうすれば、検索エンジンのキャッシュに保存されたコピーにアクセスできる場合がある。

 Andreas Lubitzという名前が明らかになった時点で、すでに彼のFacebookアカウントは削除されていたが、そのコピーはグーグルのキャッシュに存在していた。

2.データ範囲を指定した検索

​ 個人情報の一部は、その後のニュース報道で埋もれてしまう可能性がある。大ニュースになる前の時点に戻るためには、「ツール」をクリックして、ドロップダウンメニューから「期間指定」を選択しよう。

3.アーカイブサイト

​ オンライン・アーカイブは、削除・修正された資料に関する貴重な情報源である。最も優れた選択肢をいくつか紹介しよう。

 Archive.isは、ソーシャルメディアの削除された投稿・アカウントを見つけるうえで特に優れている。

 Archive.isでは、削除済みだった「メガボンバー」シーザー・セヨクのTwitterアカウントが見つかる。

また Wayback Machine は過去のウェブコンテンツに遡るという点で優れている。

Wayback Machineでは、2012年のGIJNサイトのページが見つかる。

画像検索

 同一の写真でも多種多様なウェブサイトに掲載される場合があり、たいていはキャプションもさまざまである。

 ある画像がオンラインのどこで見つかるかを見極めることにより、画像に含まれている人物を特定する情報につながる場合がある。

 グーグルの「画像で検索」は、グーグル画像検索の検索ボックス中のカメラ型のアイコンをクリックすれば利用できる。

正しい相手を特定する

 名前が非常にありふれている場合も多く、また正確に分かっていないこともある。だから、探している人物について可能な限り多くの情報を集めるのがベストだ。ウェブやソーシャルメディアの検索に織り込むことのできるさまざまな要素も考えておこう。

たとえば次のような要素はどうだろうか。

名前について

  • 正確なスペルは分かっているか。
  • David ではなく Dave といった愛称ではないか。
  • 他国語の文字を音写する方法もいろいろある。
  • もう一方の親の氏を名乗っているのではないか。
  • 結婚で氏が変わっていないか。
  • [SNSなどの]ユーザー名ではないか。

人間関係について

  • 家族の氏名が「友達リスト」に出てくる場合がある。
  • さまざまな人脈のあいだで同じ友人が共有されている場合がある。

職業について

  • 何の仕事をしているのか。
  • 勤務先の企業はどこか。

関連のある場所

  • 生まれた場所はどこか。
  • 生活、仕事の場所はどこか。

メールアドレス

  • メールのアドレスに特徴が現われる場合がある。
  • SkypeやWhatsappなどで相手の詳細な情報が見つかることがある。
  • Email Formatのようなサイトで、誰かの仕事用メールアドレスが見つかることもある

電話番号

  • truecaller.comや sync.meといったサイトを使えば、数十億件の電話番号を含むデータベースを検索できる。
  • ただしEU一般データ保護規則(GDPR)に抵触するため、EU諸国の多くの電話番号は掲載されていない。

ドメインネーム登録

  • GDPRは、ドメインネームの所有者の検索にも影響を与えている。
  • ただし、domaintools.comのようなサイトでは、過去の詳細が明らかにされている。
  • また、現在は編集されてしまった情報も、オンライン・アーカイブで参照することができる。
  • 管轄当局によっては、ドメイン情報を見つけるための申請を認めているところもある。
  • また一部のドメイン登録会社は情報を開示している。

探している人物の容貌や、関心、信念、趣味なども考慮してみよう。

人物検索ツール

一部のオンライン・リソースは、個人データを検索可能なリソースとして収集している。

  • Lushacontactoutjobjetなどのプラグインは、LinkedInなどのサイト[の機能]を補い、閲覧しているアカウントの詳細な連絡先を表示してくれる。
  • Pipl ProSpokeoなどは人物検索専門のサイトで、調査対象に関して豊富な個人情報を提供してくれる。Pipl Proでは、電話番号、メールアドレスなどの要素による検索が可能だ。Spokeoもいくつかの点でこれに似ているが、検索対象は米国市民限定である。

ソーシャルメディアの検索

人は生活のさまざまな側面に合わせて、さまざまなソーシャルネットワークに参加しており、それぞれのネットワークでフォロワーが異なる。

  • Twitterアカウントでは、見知らぬ人が数千人もフォローしている場合がある。
  • LinkedInでは仕事つながりのフォロワーが多めになる可能性がある。
  • Facebookの場合は、もっと親しい同僚や家族、友人になりそうだ。

Twitterを検索する

Twitterには非常に便利で柔軟性の高い先進的な検索フォームがある。他にも以下のようなリソースが利用できる。

  • Tweepsectは、フォロー、フォロワー、相互フォローを表示してくれる。注:2020年10月現在サービス停止
  • Followerwonkは、2つないし3つのアカウントのフォロワーを相互比較してくれる。
  • Tweetbeaverには、便利なTwitter検索ツールが揃っている。

Facebookの検索

  • Facebookの検索ボックスでは、投稿、人物、写真、ページ、グループなどさまざまなエリアにまたがる基本的なキーワード検索を行う。
  • また、グループやページには独自の検索機能が組み込まれており、特定の投稿を見つけやすくなっている。
  • Facebookの「人物」タブは、Facebookでも最も便利な機能の一つだ。名前で検索する必要すらない。探している人物の種類について、いくつか詳細な情報を入力すればいい。たとえば、単にある職業や企業、街、大学で検索することもできる。またページの左側にあるフィルターでは、検索に関連する要素を指定することができる。
  • 「投稿」タブでは、Facebookへの投稿を対象にキーワード検索をかけることができる。フィルター機能を使えば、投稿者や期間の指定、Facebookグループの検索が可能になる。
  • 先進的な「Facebookグラフ検索」について耳にしたことがあるかもしれない。残念ながらFacebookは2019年6月6日、一般ユーザーによるこの検索機能へのアクセスを停止してしまった。いくつか抜け道はあるが、Facebookの利用条件に違反する可能性があるので、注意が必要だ。

著作権保有 Paul Myers、2019年。さらなる情報については、Twitterでポール・マイヤーズ @paulmyersbbc をフォロー。



ポール・マイヤーズ
は、BBCによるイニシアチブ「インベスティゲーション・サポート」の首席コンサルタント。20年近くにわたりオンライン調査の最先端で活動しており、今世紀に入ってからはジャーナリスト仲間の指導にも当たっている。BBCでの業績の他、UNDP、世界銀行、ガーディアン、CNNその他多くの調査チームの調査担当者を支援してきた。ウェブサイトresearchclinic.netを運営している。

原文はこちら:Finding People Online: A Tipsheet From Paul Myers
この翻訳はGoogle News InitiativeとGoogle Asia Pacificの支援を受けて行われました。
This translation is supported by the Google News Initiative and Google Asia Pacific.
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